この一冊

明治期の岩国出身の偉人描く

  来年の明治維新150年にむけ、山口県は幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーンをスタートさせました。それにちなんで、岩国高~早稲田大をへて県立高で長らく日本史の教鞭をとり、近年は子どもたちを励ますため、岩国市ゆかりの人物の言葉を刻んだ「立志の碑」の建立運動を続ける佐古利南(さこ・としなみ)さんの著した「近代日本の礎を築いた七人の男たち~岩国セブン・ファーザーズ物語」を紹介します。致知出版社刊(本体価格1200円+税)。
  一昨年、佐古さんは市民大学講座での講演を依頼され、近代日本の礎を築いた岩国出身の7人を取り上げたところ、「ぜひ本にしてほしい」との要望があり1冊にまとめたと言っています。いずれも、フロンティアスピリットにあふれ、国民の利益のために生涯をささげた人ばかりで「明治の先人の高い志や彼らを生んだ教育土壌の再評価をしてもらえれば」と説明するとともに、若者に「先人に続こう」との気概を持ってほしいと励ましています。

近代日本の礎を築いた七人の男たち

  7人は初代大審院長(現在の最高裁判所長官)で不平等条約改正のため司法制度や法律の近代化に取り組み、拷問廃止を提言するなど「明治の大岡越前」と評された玉乃世履(たまの・せいり、1825~86)▽独学独習で解剖学を修め人体解剖模型の製作や「実用解剖学」を著して解剖学のパイオニアと称せられた今田束(いまだ・つかぬ、1850~89)▽日露戦争時、命中精度の高い三十年式歩兵銃を3カ月で設計、旅順攻防戦では28サンチ榴弾砲の使用を提言するなどして勝利に導き「小銃製作の父」といわれた有坂成章(ありさか・なりあきら、1852~1915)▽東芝創立者の一人で、白熱電球の国産化や発電機、発電所を作り「日本のエジソン」とたたえられた藤岡市助(ふじおか・いちすけ、1857~1918)▽「図書館は国民の大学です」として国立図書館の必要性を訴え、帝国図書館(現在の国立国会図書館)の初代館長を務め「図書館の父」と称せられた田中稲城(たなか・いなぎ、1856~1925)▽三省堂でウエブスター英語辞典の翻訳・編集をはじめ、各種辞書づくりに従事、「日本大百科辞典」を完成させ「近代辞典製作の祖(おや)」とたたえられた斎藤精輔(さいとう・せいすけ、1868~1937)▽南米を探検して日本人の南米移民の道を開き「ペルー移民の父」と言われた田中貞吉(たなか・ていきち、1857~1904)。
  佐古さんは多くの資料にあたり七人の業績に光を当てています。6万石の小藩からこれだけの逸材を輩出したことについて、藩校「養老館」や岩国英国語学所などの教育に加え、錦帯橋の存在が大きいと推論しています。この橋の美しい立ち姿が若き藩士たちの知的好奇心を刺激して向学心を高め、また見事な風光美が彼らの豊かな情感を養ったのでは、と主張しています。著者の近代の礎を作った7人の岩国人を誇りに思う気持ちとふるさとへの深い愛情のこもった一冊です。(byマッキー)

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【写真説明】上=市民大学講座の講演を1冊にまとめた「近代日本の礎を築いた七人の男たち」  下左=藤岡市助を説明したページ 同右=田中稲城を説明したページ


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