ジャズと坂道と青春と
「坂道のアポロン」のチラシ

 長崎県佐世保市を舞台に1960年代後半の青春を描いた映画「坂道のアポロン」が3月10日公開され11日、109シネマズ広島に見に行きました。小玉ユキのコミックが原作。TSUTAYA南岩国店でコミックとともに紹介されていたので公開を知り観賞しました。Hey!Say!JUMPの知念侑李が主演で中川大志とヒロインの小松菜奈の3人の友情を横糸に、ジャズセッションを通した交流を縦糸に物語は進みます。中川演じる川渕千太郎と小松の迎律子が幼なじみで、そこへ都会から知念演じる西見薫が2人の高校へ転校してくる。不良で怖がられてはいるが、ドラムが得意で本当は心優しい千太郎とクラシックピアノを弾く賢三がジャズセッションを通し、仲良くなる。3人で海水浴に行った時、美しい女性、深堀百合香(真野恵里菜)が不良たちに絡まれているところを千太郎が助け、恋をする。ところが、百合香は千太郎が兄と慕う桂木淳一(ディーン・フジオカ)の恋人だった。千太郎に思いを寄せる律子は複雑な気持ちで、百合香の真意を知るとともに律子が好きな薫は途方に暮れる。学園紛争に挫折して故郷に帰ってきた淳一は、再び一人で東京に帰ろうとするが、百合香がついていくと言ってきかない。2人が帰るところに出会った千太郎は衝撃を受けるとともに、2人の関係を知りながら教えなかった薫に激怒し、絶交状態に。
 文化祭でロックバンドに誘われ、ドラムを演奏することになる千太郎に、律子は薫とのジャズセッションもするべきだと勧めるが、千太郎は首を縦に振らない。ロックバンドの演奏中に突然停電し、演奏が不可能になり、場つなぎのため、薫がピアノの演奏を始めると千太郎もドラムをたたき始める。セッションは万雷の拍手を浴び、大成功。教会でのクリスマスコンサートまで開催することになり、律子もセッションでボーカルを担当することに。当日、千太郎のバイクの後ろに律子が乗り薫を迎えにいく途中、律子が薫への思いを千太郎に打ち明けようとしたところで、車と衝突し律子は一時意識不明に陥る。薫と千太郎は律子の父(中村梅雀)と病室の外で待っていた。律子の意識が戻ると、薫と律子の父は病室に飛び込んだが、千太郎は姿を消していた。医師となった薫は10年後、結婚した淳一と百合香の2人に遭遇した。千太郎の消息が分かる写真を見せられた薫は、母校の高校教師となった律子のもとを訪れ、一緒に千太郎が神父となった教会へ向かう。

 

小松菜奈の存在感キラリ
 千太郎は子どもたちに、ドラム演奏を披露していた。そこに訪れた2人に、結婚の立ち合いをしてやろうかという。薫はオルガンで、千太郎のドラムとセッション。薫は「一番大切なものは」と問われ、「今この時」と答える。律子が自分の本当の気持ちを伝えようとする寸前で終幕を迎える。重要なシーンを「モーニン」や「マイ・フェイバリット・シングズ」などのジャズの名曲が彩る。薫が転校してきた時と千太郎に会いに行く際、律子を迎えに母校の坂道を上るのに「いまいましい坂だ」ともらすのが「青春のほろ苦さ」を表しているような気がする。全編を通して、小松菜奈の存在感がキラリ輝いており、お見事の一語。ただ、個人的には、バイクの事故でクリスマスコンサートが中止になり、小松のヴォーカルが聞けなかったのは残念。小松の次回作「恋は雨上がりのように」(共演・大泉洋、5月25日公開)にも期待したい。【小中真樹雄】
「恋は雨上がりのように」のチラシ
【写真説明】上=「坂道のアポロン」のチラシ(東宝) 下=「恋は雨上がりのように」のチラシ(東宝)


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